NTCサーミスタ技術情報
1.抵抗―温度特性
PTCサーミスタの周囲温度を変えながら、ジュール熱による自己発熱を伴わない程度の微少電圧(通常DC1.5V以下)で電気抵抗を測定すると、図-1に示すような抵抗―温度特性が得られます。一般にPTCサーミスタは常温付近の温度範囲に於いて、ほぼ一定あるいはわずかに減少する抵抗温度特性を示し、ある温度から急激に抵抗値が上昇します。この抵抗急変点となる温度をキュリー温度(Tc)と称します。
2.キュリー温度(Tc)
キュリー温度(Tc)の定義につきましては、図―2に示すように「最小抵抗値の(Rmin)の2倍の抵抗値になる温度」と設定しています。
3.温度係数
PTCサーミスタは図―2に示すように、キュリー温度を超える温度領域では急激に抵抗値が上昇しますが、この温度による抵抗増加の傾きを温度係数αと呼び、以下の式によって求められます。
4.電流―電圧特性
図―3のように低電圧側から徐々に電圧を上げていくと、各電圧で熱平衡に達しながら電流は定抵抗ラインに沿ってほぼ直線的に上がっていきます。これは、低電圧領域ではジュール熱による自己発熱が少ない為、PTCサーミスタが定抵抗体として機能する為です。更に電圧を上げていくと、自己発熱が起こりPTCサーミスタの抵抗値が上昇する為、電流極大点に達した後、定電力ラインに沿ってほぼ直線的に下がっていきます。また、周囲の温度の変化に対しても変化を示します。
5.保護電流
図―3の電流極大点はそのPTCサーミスタが静的に流せる最大の電流値であり保護電流とも呼ばれます。
6.耐電圧
図-3において定電力領域を超えて更に電圧を上げていくと、電流極小点に達しこれ以上電圧を上げると電流が急増する領域に入ります。この時、PTCサーミスタの抵抗温度特性の安定点は図―2のTN点付近にあるといえ、これ以上の電圧を印加するとPTCサーミスタはTN点を超えて抵抗値が下がっていき、やがて高抵抗を保つことができず電圧破壊を起こします。この時の電圧を耐電圧といい、 PTCサーミスタの定格電圧はこのTN点付に至る電圧を基準に商品の信頼性を含めたマージンをもって定められています。
7.電流減衰特性
保護電流(PTCサーミスタが静的に動作する極大電流)以下となるような電圧を印加した場合、 電流は時間が経過しても変わりません。しかし、保護電流より大きな電流をPTCサーミスタに印加すると、印加直後は大きな電流が流れ、 その後急激に電流が減衰する図―4のような電流減衰特性が得られます。
8.動作時間
PTCサーミスタに電圧印加した時から電流が減衰するまでの時間を動作時間と呼び、一般的には突入電流(I0)が1/2になるまでの時間を言います。
9.安定電流
PTCサーミスタに電圧を印加した際に、PTCサーミスタの温度が安定した時に流れている電流を安定電流と言います。一般的にPTCサーミスタのゼロ負荷抵抗値が高いほど、また、印加する電圧が大きいほど安定電流は小さくなります。
10.復帰時間
PTCサーミスタに電圧を印加して発熱し高抵抗状態になった後、電圧印加をなくした時点を基準として、ゼロ負荷抵抗値の2倍の抵抗値になるまでの時間を復帰時間と言います。